2022.07.01

マタニティスイミングとは?妊婦さんの水泳の効果やプールで注意する点

 

こんにちは!
Dr.トレーニング マタニティトレーニング事業部責任者、青柳です!

私は日本の高等学校卒業後、アメリカに渡り、アメリカで準医療資格である
NATA-ATC(全米アスレティックトレーナーズ協会認定トレーナー)を取得し、現在もパーソナル トレーナーを行なっております。これまで、100人以上の妊婦さんや産後の方をサポートさせていただいている私の知識や経験から記事を書いておりますので、どうぞ最後までご覧ください。

 

マタニティスイミングとは

 マタニティスイミングは、妊婦さんがプールに入って体力向上、不定愁訴の改善、気分転換・リラクゼーションを目的にしたプログラムです。

プログラムの内容は、水泳、ウォーキング、ビクスや座禅・呼吸法など、妊娠中の運動不足解消、体調管理、出産・産後に備えたからだ作りに役立つものです。

 

妊娠中にプールに入っていいのか?

 妊娠中にプールに入って、スイミングやウォーキングをして良いか、と疑問に思う方もいると思います。

妊娠中に運動を始める条件として、下記の条件※1を満たしていれば、基本的に問題はありません。

 ・後期流産・早産の既往がないこと
 ・偶発合併症,産科合併症がないこと
 ・単胎妊娠で胎児の発育に異常が認められないこと
 ・妊娠 12 週以降であること

弊社Dr.トレーニングを含め、妊婦さんへの運動指導を実施する施設では、妊娠経過証明書の提出を必須とする施設が多いです。

※リンク先https://maternity.drtraining.jp/common/images/contact/drt_syoumeisyo.pdf

この証明書は、妊婦健診を受けている医療機関で取得でき、担当医師が妊婦さんやお子さんの健康状態に異常がないこと証明するものです。

これからマタニティプログラムへの参加を検討している方は、事前にかかりつけ医師へ相談し、早めの準備をおすすめします。

 

 

いつからマタニティスイミングを始めていいのか?

マタニティスイミングの開始と終了の時期は、基本的に他の運動と同じように考えてもらえると良いです。

 

おおよそ、妊娠4〜5ヶ月(12〜16週)目が開始の目安となっています。

妊娠12週目から自然流産が起こる可能性が低くなる、妊娠16週目に入るとよりその可能性が下がり、前置胎盤の診断が可能になる時期※1であるということから、妊娠中の運動がより安全・確実に実施できると考えてください。

 

マタニティスイミングの終わりはいつ?

終了の時期は、臨月(妊娠36〜39週)までとしている施設が多いようです。

個人差はありますが、臨月に近づくにつれて、お腹の大きさで足元が確認しづらく、歩いていてバランスを崩しやすいと感じる妊婦さんもいます。

 

マタニティスイミングを実施している施設では、プールサイドでの転倒防止やプール内の水温など、安全管理を徹底しているようですが、運動中に何か不安を感じた場合は、運動を中止して、すぐスタッフ・医師へ相談できる環境を整えておくことが望ましいと思います。

 

マタニティスイミングのメリット

マタニティスイミングは、妊娠中に推奨されている運動のひとつです。有酸素運動には他の選択肢もありますが、下記に紹介するメリットは見逃せません。

 

むくみの改善

むくみは、水分が身体の一部に留まることで起きやすくなります。スイミング中は水圧より全身が適度に圧迫された結果、血管外の体液が血管内へ移行され、循環血流が増加します※2。

 股関節・骨盤周りの動きが悪いと感じている方は、むくみを強く感じる傾向にあるため、スイミング前の準備体操や普段の生活でできるストレッチも実践できると、より効果的です。

 

リラックス効果&体力向上、肩こり・腰痛の改善

 水中運動を継続した妊婦さんの80%以上が、肩こり、腰痛、体のダルさの改善が実感できたとする研究報告があります※3。

 水中では浮力と水の重さにより、膝・腰への負担を減らしつつ、同時に適度な抵抗をかけながら運動ができ、ウォーキングやビクスのコースでは、泳ぎが苦手な方でも無理なく、股関節や肩周りの運動ができます。

 疲れたときには、水に浮いてリラックスができることは、スイミングならではのメリットです。

 

適度な体重増加の管理

 水泳を妊娠期間中に10回以上行った妊婦さんは、体重増加がそれ以下の妊婦さんより抑えられた※4との報告があります。

 また水泳を始める時期が早い方が運動回数が増え、泳ぎ方の効率が上がり、運動に対するモチベーションも高くなったため、より体重増が抑えられたと考えられます。※4

 

 

 

マタニティスイミングの注意点

 マタニティスイミングを安心・安全に実施するために、以下のことを確認してください。

 

・妊娠中に安心して運動ができる施設か?

 医師や助産師が常駐している施設であれば、運動前の血圧や体重測定も実施している場合が多いので、より安心して通えます。
また、施設への入会時に、プールの水温(30℃前後)、衛生管理、プールサイドや水中でのケガの対策・対処についても、確認をしておくと良いです。

 

・運動中の体調確認

 スイミングを含めた運動中に、
子宮出血、羊水の漏れ
腹部痛・痛みを伴う子宮収縮
呼吸困難
めまい・失神
頭痛、胸部痛
バランスを失って、体に力が入らない
ふくらはぎの痛みや腫脹

※5
といった症状が出た場合は、すぐに運動を中止して、医療機関でのチェックを受けてください。

 

プールに入る前後に気をつけること

プールに入る前後の注意点も、ぜひ覚えておいてください。

 

・粘膜・皮膚の感染症予防

 衛生管理をしているプールでも咽頭結膜熱(プール熱)、結膜炎など、粘膜への感染症のリスクはゼロではないので、キャップ・ゴーグルの着用と運動前後のシャワーを徹底すると良いです。
皮膚感染症の場合は、症状が悪化したり、他の人へ感染させることを防ぐため、入水を避けたほうが良い場合もあります。

 

・意識的にトイレへ行く+水分補給

 水中での運動は腎臓への血流を増加させ、作られる尿の量も増えます※2。そのため、トイレに行く回数も増えると考えておきましょう。

 マタニティスイミングのときにも汗はかきます。プールの水温も少し高めに設定されているので、運動中・後に脱水状態で筋肉がつったり、熱中症にならないよう、水・お茶、スポーツドリンクなどでの水分補給も忘れないでください。

 

・体を冷やさないように工夫をする

 運動後に体が濡れた状態が続くと、気化熱によって体温が低下しやすくなります。特に秋〜冬場で気温が低い時期と、体の冷えを感じやすい方は注意をしてください。

 

マタニティスイミングのおすすめの実施方法

 妊婦さんが水中で行う運動にはスイミングも含め、色々と種類があります。

 スイミングの場合は、4泳法(クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ)で泳ぐことがメインとなります。

 

背泳ぎと平泳ぎは、普段の生活で不足しがちな肩・背中、股関節周りを大きく回す・伸ばす動きが含まれるため、特におすすめできます。

ぜひ指導を受けて、体に負担が少ないフォームを覚えてもらいたいです。

 

また泳ぎが苦手な方には、水中ウォーキングから始めてみましょう。

お腹から肩あたりの高さまで水に入れば、泳ぐのと同じような肩・股関節周りの運動ができます。

運動は苦手だけど、肩こり・腰痛、むくみが気になる方は、肩・背中、股関節周りと体幹部を大きく動かせる動きをウォーキング中に組み合わせると良いでしょう。

 

マタニティスイミングのプログラムでは、座禅や呼吸にフォーカスしたものもあります。

運動経験や体力に自信のない妊婦さんは、水中の浮力や手足につける浮き具を利用して、全身の力を抜いてリラックスすることに慣れましょう。

水中での呼吸や顔を出しての息継ぎは、出産のときの痛みを和らげるための呼吸(ラマーズ法)に近いものになります。

 

マタニティスイミング|まとめ

 今回はマタニティスイミングについてお話をしました。
スイミングだけではなく、運動によるメリットを実感し、理想の状態をキープするには、一度限りではなく、継続的な運動習慣を身につける必要があります。
プールが好きで、ご自身の自宅から施設までの移動に不便がない方は、マタニティスイミングが良いですが、他の運動・スポーツで代用できる場合も多いです。

 

 

Dr.トレーニングは東京19店舗と大阪3店舗で、筋力トレーニングだけではなく、妊婦さんのご希望や目的に合わせた、運動・食事・休養の方法を提案しています。

お困りの方は、経験と知識があるトレーナーにご相談いただきたいです。

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【筆者プロフィール】

Dr.トレーニング|マタニティ事業部責任者
青柳 陽祐

 

【学歴】
ラッセル大学 アスレティックトレーニング&スポーツサイエンス学部 ATC学科

 

【職歴】
慶應義塾大学医歯薬学部ラグビー部
東京健康科学専門学校 非常勤講師
コモゴルファーズアカデミー

 

【資格】
NATA-ATC(全米アスレティックトレーナーズ協会認定トレーナー)

 

参考文献

※1 妊婦スポーツの安全管理基準(2019)日本臨床スポーツ医学会 産婦人科部会. 日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 28 No. 1, 2020.213-219

https://www.rinspo.jp/files/proposal_28-1-01.pdf

 

※2 Pendergast, D. R., Moon, R. E., Krasney, J. J., Held, H. E., & Zamparo, P. (2015). Human physiology in an aquatic environment. Compr Physiol, 5(4), 1705-50.

https://www.researchgate.net/profile/Paola-Zamparo/publication/282362173_Human_Physiology_in_an_Aquatic_Environment/links/564c75ed08ae020ae9fa5ec2/Human-Physiology-in-an-Aquatic-Environment.pdf

 

※3 堀井満恵, 坂まりこ, 宮下真理, 長谷川ともみ, & 塚田トキヱ. (1999). 妊婦水泳の安全性・有効性の検討.

https://toyama.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2517&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

 

※4 Okuda, H., Takatori, A., Sakata, J., Kamimoto, M., Fujii, J., Dokai, C., & Tanizaki, Y. (1992). 岡山大学医学部附属病院三朝分院における妊婦水泳―第 5 報 妊婦水泳による体重減少効果について―. 岡大三朝分院研究報告, 63, 85-88.

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/15330/20160527212106268452/063_085_088.pdf

 

※5 Physical activity and exercise during pregnancy and the postpartum period. ACOG Committee Opinion No. 804. American College of Obstetricians and Gynecologists. Obstet Gynecologist 2020; 135:e178-88.

https://www.acog.org/-/media/project/acog/acogorg/clinical/files/committee-opinion/articles/2020/04/physical-activity-and-exercise-during-pregnancy-and-the-postpartum-period.pdf

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